こんにちは。新熊屋@夜景最高です。
今年の冬は大雪に見舞われていますが、そんななかでもぽっかり雲間が開ける夜がたまにあります。そんな星空が見えるチャンスを生かして、スタートレイル(星の軌跡)を撮影してきました。
はじめにお断りしておきますが、私は北極星がどの星かもわからない夜空のシロウトです。そんなシロウトでもやり方さえわかれば星の軌跡写真を撮影することができるので、難易度はそれほど高くはありません。
24時間で360度回転している夜空
御存じのとおり、地球は自転によって1日24時間で1回転しています。この自転のおかげで星空もどんどん動いています。この動きは意外と速くて、シャッター速度を30秒にして夜景を撮影していると、下の画像のようにごく短くですが星が線のようになって映り込みます。
今回は「比較明合成」という手法を使用して、この短い星の軌跡をつなぎ合わせて1本の長い軌跡を表現する撮影方法をご紹介します。
作業としては、
- 素材写真の撮影
- 撮影した素材写真のレタッチ
- ツールを使っての比較明合成
という流れになります。
素材写真の撮影
まずは星空の撮影です。
上でも述べましたが、「短い星の軌跡をつなぎ合わせて1本の長い軌跡」にするために、同じ場所、同じ構図の写真を多数撮影します。
カメラの固定
三脚にカメラを固定して構図を決定します。このとき、何枚か試し撮りして構図を決めるのがいいでしょう。素材写真の撮影を開始したらカメラを動かすことはできないので、ここでしっかり構図を作りこみます。
例えばトップの写真は、旭カーボンの工場夜景と星空を組み合わせたかったので、普段の旭カーボンでの撮影では使用しない広角レンズを使用して、なるべく星空が映る構図にしています。
ピントの設定
夜景撮影全般にいえますが、暗い場所でオートフォーカスでピントを合わせようとするとなかなかうまくピントが合わないことがあります。こんな時はマニュアルフォーカスにして自分でピントリングを回しながらピントを合わせます。
今回のような星景撮影の場合、ピントを合わせる際にはカメラの液晶画面にて星を拡大表示した状態でピントリングを回して、液晶画面の星が一番小さくなるようにピントを合わせます。
カメラの露出設定
構図が決まったらカメラの露出設定をします。
カメラ側の露出モードはマニュアル設定にして、自分でシャッター速度、F値、ISO感度を設定します。
私の場合、できるだけシャッター速度を長くして撮影枚数を減らしたかったので、
- シャッター速度:30秒
- F値:レンズの開放F値
(使用するレンズで一番小さなF値)
としました。
この設定で試し撮りをして適度な明るさになるISO値を探していきます。
旭カーボンでの撮影では、周りが明るかったのでISO値500で撮影しました。上堰潟公園での撮影ではISO値800まで上げていましたが、撮影した写真が暗かったのでもっと上げればよかったなと実感しました。
また、撮影後のレタッチを考えてRAWファイル形式で撮影しておくといいでしょう。
インターバルタイマー
私の使っている「EOS 6D mark2」は「インターバルタイマー」が設定できます。
「インターバルタイマー」とは設定した撮影間隔で、設定した撮影回数だけ撮影する機能です。
設定はMENU画面から、カメラマーク「4」タブ「インターバルタイマー」で「撮影間隔」、「撮影回数」を設定できます。
「撮影間隔」は、「設定された間隔で1回シャッターを切る設定」です。イメージ的には「設定間隔ごとにシャッターボタンを自動で押してくれる機能」というとわかりやすいでしょうか。
例えば、シャッター速度10秒、撮影間隔20秒の場合は、 シャッターを切ってから20秒後、シャッターが閉じてから10秒後に次のシャッターを切ります。なので基本的にはシャッター速度より長い時間の「撮影間隔」を設定します。撮影間隔は下のようなイメージなり、シャッターが閉じてから次の撮影が開始されるまでに10秒の待ち時間が発生します。
この「撮影間隔」がシャッター速度より遅いと、撮影している最中に再度シャッターを切ることはできないので、その回の撮影はキャンセルされます。
下のイメージでいうと「撮影トライ:X」となっている箇所が撮影がキャンセルされたところになります。このため、インターバルタイマーで設定した「撮影回数」より少ない枚数しか撮れなくなってしまいます。
「撮影回数」はその名の通り、何枚写真を撮影するかの設定です。設定を0にすると電源を切るまで撮影を続けます。
もしカメラにインターバルタイマーの設定がない場合は、インターバルタイマー用のリモートレリーズが販売されていますので、そちらで設定します。
撮影開始
構図を決定して、カメラの設定も完了したら撮影開始です。
スタートレイルは長時間になればなるほど伸びてきます。時間に余裕があれば多めに撮影して後の比較明合成時に長さを調整する、ということも可能です。
また、撮影する時間は同じでも空の方角によってスタートレイルの長さも変わってきます。北極星に近い北の空では比較的短く、北極星から離れる東西の空は星の軌跡は長くなります。
上の写真は、新潟市の上堰潟公園で1時間半ほどのあいだで撮影した約160枚の写真を合成したものです。北極星がどれかわかりませんでしたが、ちょうどいい感じに北極星が中心付近に来ていたのが、合成後にわかりました。
下の旭カーボンの写真は、東の夜空を60分ほど約100枚の写真を合成したものです。
この二つの写真を比べると方角によってスタートレイルの長さの違いが判ると思います。
レタッチで不要な光跡を取り除く
1時間も星空を撮影していると、上の画像のように、上空を行きかう飛行機が飛んでいく光跡が映り込むことがあります。
比較明合成処理をすると不要な光跡も入ってくるので、この場合は撮影後にレタッチソフトで不要な光跡を修正します。
あわせて必要ならば明るさなどの微調整をおこないます。ただし画像の微調整は1枚ずつすべての画像に対して手で調整するのは時間がかかるので、1枚だけ調整したらその設定をコピーして他の画像にペーストする方法がいいでしょう。
画像の微調整が完了したら、JPEGに出力して比較明合成処理の素材作りは完了です。
比較明合成とは
比較明合成とは画像合成処理のひとつで、複数の画像を合成する際にピクセルごとにそれぞれの明るさを比較し、一番明るい画像の情報を合成後の画像に反映する合成方法です。
この「一番明るい画像の情報を反映する」という方式で夜空の画像を合成すると、それぞれの明るい部分が反映されて、星の軌跡が浮かび上がってきます。
比較明合成ソフト
私が使っている比較明合成ソフトは「SiriusComp64」というソフトです。
SiriusComp | 比較明合成&タイムラプス動画生成フリーソフト
日本語で作成されたメニュー画面と、出力先ファイルと合成するファイルを選ぶだけのお手軽操作が特徴のフリーソフトウェアです。 また、合成ファイルと同時にタイムラプス動画も作成できる優れものです。
このあいだ撮ってきた星グルグル写真を動画にしてみました。 pic.twitter.com/B1R8VmL9zn
— 新熊屋 (@nii_kuma_ya) 2021年2月20日
フリーソフトウェアでここまで作れるなら十分だと思います。
さいごに
スタートレイルはまだ回数をこなせていないのですが、機会があればさらに挑戦してきたい分野です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。